11月から12月に短期のアルバイトを3人入れても、教える社員は自分の持ち場で手一杯です。結局「見て覚えて」で初日が始まり、昼までにレジの打ち間違いや、何をすればいいか分からない待ち時間が出ます。
繁忙期の短期スタッフの教え方は、任せない仕事を先に決めてから、初日に教える内容を絞る順で組みます。教える内容を増やすほど、教える社員の手が止まるからです。
この記事の結論
- 教える前に、判断が要る仕事、お金や個人情報に触る仕事、間違えると取り返しがつかない仕事を「社員が持つ仕事」として外す
- 残った仕事を、初日に教える、社員の隣で見て覚える、2日目以降に任せる、の箱に分ける
- 初日に教える安全衛生の中身は、労働安全衛生規則35条の8項目から、その人の業務に当たる号を選ぶ
- 2日目以降は任せる仕事を1日1つずつ増やし、その日の終わりに3行だけ聞く
この記事で扱うのは、自社で直接雇う短期のアルバイトとパートです。派遣スタッフと業務委託の人は扱いません。
繁忙期の短期スタッフの教え方は社員が持つ仕事から決める
短期スタッフに教える内容は、任せる仕事を決めた後に決めます。任せる仕事を決めないまま教え始めると、社員は思いつく順に全部を教えることになります。
教える時間が足りなくなる原因は、任せる仕事の分け方です。任せる仕事が5つあれば5つ分の説明が要りますが、2つに絞れば初日の説明は2つで済みます。
社員が持つ仕事を決める作業は、募集を出す前に済ませておきます。年末の繁忙期に入れるなら、10月の終わりから11月の初めが目安です。
- 募集を出す前:社員が持つ仕事を決め、残りの仕事を箱に分ける
- 初日の前日:初日の時間割を組み、使う道具と置き場所をそろえる
- 初日:時間割どおりに、初日に教える箱の仕事だけを教える
短期スタッフは、初日に渡された手順の紙を、そのまま仕事の進め方にします。前の職場のやり方を持ち込む経験者を受け入れるときの考え方は、中途採用が即戦力にならない理由をまとめた記事に書きました。
教えない仕事の決め方|3つの問いと3つの箱
教えない仕事は、3つの問いで外します。外した後に残った仕事を箱に分けると、初日に教える仕事が1つか2つまで減ります。
社員が持つ仕事を決める3つの問い
店や現場の仕事を1つずつ書き出し、それぞれに次の問いを当ててください。
- その場で判断が要るか(返品を受けるか、クレームにどう答えるか)
- お金や個人情報に触るか(レジ締め、釣り銭の補充、顧客台帳)
- 間違えると取り返しがつかないか(発注の数量、刃物や高温の機械、出荷先の宛名)
1つでも当てはまる仕事は、短期スタッフに任せません。社員が持つ仕事として、名前を書いて残しておきます。
私がマニュアルを書くときの基準は、「それ、新人にできますか?」という問いです。短期スタッフの場合は、教わって数時間の人ができるかで読み直してください。
ポイント
業種ごとに、社員が持つことが多い仕事です。
- 飲食:仕込みの味の判断、フライヤーの油の交換、閉店時のレジ締め
- 小売:返品と交換の受付、値引きの判断、取り置きの管理
- 物流・工場:フォークリフトの運転、出荷先の変更、不良品の判定
残った仕事を3つの箱に分ける
問いに1つも当てはまらなかった仕事は、「初日に教える」「社員の隣で見て覚える」「2日目以降に任せる」の3つの箱に分けます。
初日に教える箱に入れるのは、その日から一人で回せないと店や現場が困る仕事です。品出し、袋詰め、ピッキングのように、手順が毎回同じ仕事が向いています。初日に教えるのは1〜2つまでです。
社員の隣で見て覚える箱には、手順は同じでも、客の前で動く仕事を入れます。レジの補助や電話の一次受けが、この箱の仕事です。2日目以降に任せる箱には、初日の仕事に慣れてから足す仕事を入れます。

箱に分けにくい仕事が多いときは、先に仕事を並べ直します。30分で区切って書き出すやり方は、業務の洗い出し方法にまとめました。
初日に教えることは、法令の8項目から自社に当たる号を選ぶ
初日の安全衛生の教育は、労働安全衛生規則35条の8項目から、その人の業務に当たる号を選んで組みます。短期スタッフも、雇い入れたときの教育の対象です。
労働安全衛生規則35条の8項目
労働安全衛生規則35条1項は、労働者を雇い入れたときと作業内容を変えたときに、遅滞なく教育を行うよう事業者に求めています。根拠は労働安全衛生法59条です。教える事項は次の8つです。
- 機械等、原材料等の危険性または有害性と、その取扱い方法
- 安全装置、有害物抑制装置または保護具の性能と、その取扱い方法
- 作業手順
- 作業開始時の点検
- その業務で発生するおそれのある疾病の原因と予防
- 整理、整頓と清潔の保持
- 事故時等の応急措置と退避
- 1〜7のほか、その業務の安全または衛生のために必要な事項
教える対象は8項目すべてではありません。条文が求めているのは、その人が従事する業務に必要な事項です。品出しだけを任せる人に、使わない機械の取扱いを教える必要はありません。
同じ条の2項では、十分な知識と技能があると認められる人について、その事項の教育を省略できるとしています。
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第35条、e-Gov法令検索「労働安全衛生法」第59条
短期スタッフにも教育は要る
厚生労働省の委託事業でまとめた製造事業者向けの冊子は、安全衛生教育を雇用期間に関わらずすべての労働者に行うものとしています。冊子では、働く時間や日数が短い人、雇用期間が決まっている人を、パートタイマーや期間従業員と呼んでいます。
出典:厚生労働省「製造事業者向け 安全衛生管理のポイント〜パートタイマーや期間従業員などの安全衛生のために〜」(PDF)
注意
どの号が自社の業務に当たるか、どこまで教えれば足りるかは、業務の中身によって変わり、条文を読むだけでは決まりません。迷ったときは、事業場を管轄する労働基準監督署に問い合わせて確かめます。社会保険労務士に相談する方法もあります。
7号の事故時の応急措置と退避は、実際に事故が起きたときの連絡の順番と一緒に教えると、短期スタッフでも動けます。連絡と記録の順番は、労災が起きたときの初動の記事で説明しました。
新卒の受け入れでも、初日に教える内容は同じ8項目をもとに決めます。長く働く人向けの準備は、初めての新卒採用の準備と受け入れマニュアルの記事にまとめています。
初日4時間の時間割(2.1の目安)|号を割り当てる
初日の4時間の組み方は、選んだ号の中身を時間帯ごとに割り当てる形です。中心は3号の作業手順で、6号と7号を教えるのは最初の30分です。
この時間割は2.1が示す初日の目安で、法令で決まったものではありません。最初に組む時間割は、30〜40点の出来でかまいません。
- 9:00〜9:30:持ち物の置き場所と通路、ごみの捨て方(6号)。非常口、救急箱の場所、けがをしたら誰に知らせるか(7号)
- 9:30〜10:30:初日に教える箱の仕事1つ目を、社員がやって見せてから一緒にやる(3号)
- 10:30〜11:00:使う道具の始業前の点検(4号)。カッターや台車、保護手袋など、その業務で使うものの扱い(1号・2号は当たる業務だけ)
- 11:00〜12:15:1つ目の仕事を一人でやり、社員は隣の持ち場から見る(3号)
- 12:15〜13:00:2つ目の仕事を同じ順で教える(3号)。終わりの10分で、手洗いや水分補給など、その業務で体を守るための注意(5号・8号)と、2日目の仕事を伝える
教える順番は、やって見せる→一緒にやる→一人でやるの3段階にします。1つの仕事をこの順で教えると、社員が隣に付きっきりになる時間は最初の1時間ほどに収まります。

けがは仕事を始めてから起きるので、非常口と知らせる相手は、仕事を教える前の9:00〜9:30に伝えてください。
チェック
初日の前日までに、次の4つを用意しておきます。
- 時間割を書いた紙(社員と短期スタッフで同じもの)
- 初日に教える仕事の手順を1行1動作で書いた紙
- 非常口と救急箱の場所を書いた店内の図
- けがをしたときに知らせる社員の名前と内線番号
この時間割を毎年使うなら、仕事の順に沿って手順書に書き残しておきます。工程に分けてから書く順を決めるやり方は、業務フローの手順書の作り方で説明しました。
2日目以降|任せる仕事を1つずつ増やして、終わりに3行聞く
2日目からは、前の日の仕事を一人でやってもらい、できていれば次の箱から1つだけ足します。増やす速さを決めるのは、その人ができた仕事の数です。
朝の最初の15分は、前の日に教えた仕事を一人でやってもらい、社員が5分だけ見ます。できていれば、隣で見て覚える箱か、2日目以降に任せる箱から仕事を1つ足します。増やす仕事は1日に1つまでです。
新しい仕事を頼むときは、何を、いつまでに、どんな形で仕上げるかを口頭だけで済ませず、紙に書いて渡します。口頭で頼んだ仕事が違う形で上がってくる理由は、仕事の指示が伝わらない原因の記事で書きました。
ミスが出たら、本人に理由を聞く前に、渡した手順の紙のどの行が抜けていたかを見ます。直すのは手順の行で、次に入る短期スタッフにはその行を足した紙を渡します。行の直し方は、ミスの再発防止の手順書の記事で説明しました。
その日の終わりには、できたこと、迷ったこと、聞きたいことを口頭で聞きます。社員は答えを1行ずつメモに残します。迷ったと答えた仕事は、翌朝の15分でもう一度一緒にやってください。
繁忙期の短期スタッフの教え方でよくある質問
勤務が数日の人でも、日本語に不安がある人でも、教え方の順番は変わりません。変わるのは、任せる仕事の数と手順の書き方です。
Q1. 1日だけ働く人には、初日に何から教えますか?
その人の業務に当たる号はすべて教えます。時間割は、最初に6号・7号、次に任せる仕事1つの3号を置いて組みます。1日だけの人も、雇い入れたときの教育の対象です。
労働安全衛生規則35条の条文には、雇用期間による区別は書かれていません。上で紹介した厚生労働省の冊子も、雇用期間に関わらず教育を行うものとしています。教える範囲に迷う号があれば、管轄の労働基準監督署に問い合わせてください。
Q2. 教える社員を割けないときはどうしますか?
社員が持つ仕事を増やし、任せる仕事を1つに減らすのが先です。任せる仕事が1つなら、2つ目の仕事に充てていた12:15〜13:00も、1つ目の仕事の練習に回せます。
時間割から3号の作業手順の時間は削らないでください。削ると、一人で動き始めた後に止まる回数が増えます。
Q3. 外国人や日本語に不安がある人にはどう教えますか?
初日に渡す手順の紙を、1行に動作1つだけの短い文で書きます。「それ」「あれ」を使わず、置き場所や道具の名前で書くと、読み違いが減ります。
やさしい日本語への書き換えや、写真の入れ方は、外国人スタッフに渡すマニュアルの作り方の記事でまとめました。
まとめ|社員が持つ仕事を3つ書き出してから初日を組む
まずは、短期スタッフに任せない仕事を紙に書き出してください。判断が要る仕事、お金や個人情報に触る仕事、間違えると取り返しがつかない仕事から、1つずつ選びます。
任せない仕事が決まれば、残りの仕事を箱に分けられ、初日の4時間に何を教えるかも決まります。初日の終わりに聞いた「迷った」を手順の紙に1行ずつ書き足していけば、2人目からは教える時間が短くなります。
毎年同じ時期に短期スタッフを迎えるなら、仕分けた結果と時間割を一度手順書にしておいてください。来年は前日の準備から始められます。
毎年の受け入れ準備を手順にしておくなら
内容を確認後、担当者よりご連絡いたします。

