業務フロー図は描けたのに手順書が1枚も増えないのは、図のどの工程から書き始めるかを決める物差しがないからです。全部の工程を図の順に書こうとすると、1つ目の工程をどこまで細かく書くかで手が止まり、図だけが壁に残ります。そのあいだも、担当者が休むと止まる工程は、手順書のないまま残っています。

業務フロー図は、手順書を書く順番を決める地図として使えます。

この記事の結論

  • 業務フローは仕事全体の流れ、手順書は1つの工程のやり方で、図の工程番号で2つをつなぐ
  • 図の工程ごとに担当者へ聞き、「悩む・迷う・やり直す」の3つの印を付ける
  • 工程と手順書の状態と印を、工程ごとの一覧表(手順書マップ)に写し、印の多い工程を1番にする
  • 最初は1番の工程を1枚だけ書き、新人に読んでもらって止まった行を直す

ここから先は図が1枚できている前提とし、フロー図の記号や作図ツールの選び方は省きました。

業務フローと手順書は何が違うのか

業務フローは、誰がどの順で何を次の人に渡すかを1枚に並べた、仕事全体の流れです。手順書は、その中の1つの工程の進め方をまとめた紙です。図が答えるのは「次は誰の番か」で、手順書が答えるのは「この工程で何をするか」です。

図の箱の中に手順まで書き込むと、矢印が文字に埋もれ、流れが追えなくなります。手順は工程ごとに別の紙にして、図の工程番号と手順書の番号をそろえてつなぎます。図を見て「4番で止まっている」と分かったら、4番の手順書を開けば済みます。

1枚の業務フロー図と工程ごとの手順書

私は、仕事全体の流れをワークフロー、1つ1つの作業のやり方をオペレーションと呼び分けてマニュアルを作ってきました。業務フロー図はワークフローの側、手順書はオペレーションの側にあたります。

流れを先に見える形にしてから、中身を工程ごとに手順書にしていく順番は、事業承継前の業務の見える化でも変わりません。

手順書はどの工程から書くか|「悩む・迷う・やり直す」の印

書き始める工程は、担当者が判断に詰まったり、人によって進め方が違ったり、やり直しが出たりしている工程です。図の上でその工程を見つけるために、工程ごとに印を付けます。

マニュアルの目的を、私は「悩む・迷う・やり直す」を仕組みで消すことだと考えてきました。フロー図の上では、この3語をそのまま工程を選ぶ印の名前に使えます。

  • 悩む:次にどうするかの判断で手が止まり、誰かに聞いてから進めている
  • 迷う:同じ工程なのに、担当者によって進め方が違う
  • やり直す:ミスや差し戻しが出て、同じ作業をもう一度している

図を描いた人が、工程の担当者に1工程ずつ聞きながら印を付けます。聞くことは、「最近、この工程で誰かに聞きましたか」「隣の人と進め方が違いますか」「差し戻しは出ていますか」です。答えが「はい」なら、その印の欄に○を付けます。

業務フローの工程に3つの印を重ねた図

「悩む」の印が付いた工程で、相談する相手がいつも社長なら、印の数が同じ工程の中では先に手順書を書く候補です。社長が答えるまで仕事が止まる形は、社長が現場から抜けられない理由と同じつくりをしています。

「やり直す」の印が付いた工程は、手順書ができたあとも、ミスが出るたびに1行ずつ直すことになります。直す行の見つけ方は、ミスの再発防止の手順書にまとめました。

今は担当者に話を聞く時間が取れない工程は、印を空けたままにせず、備考に「担当者にしか分からない」と書いておきます。印が0の工程と見分けるためで、その人が休めば止まる工程の目印にもなります。

書く順はどう決めるか|業務フローを手順書マップに写す

書く順は印の数で決まり、印の多い工程が1番です。手順書がすでにあって印が0の工程には、新しく手を付けません。

フロー図の工程を上から1行ずつ写し、手順書の状態と3つの印を横に並べた表が手順書マップです。手順書マップと3つの印の使い方は、この記事のために2.1が組んだ表で、役所や業界が決めた書式ではありません。

手順書マップの様式

1行に1つの工程を書き、工程名はフロー図の箱に書いた言葉をそのまま使います。

工程 担当 手順書の状態 悩む 迷う やり直す 印の数 書く順 備考
①見積依頼の受付 営業事務 ある 0 書かない
②見積作成 営業 ない ○ ○ ○ 3 1 値引きの判断を毎回課長に聞く
③受注の確認 営業事務 ない 0 後回し
④発注・手配 購買 あるが古い ○ ○ 2 整理へ 手順書は前の発注システムのまま
⑤納品 配送 ない ― ― ― ― 聞き取りから 担当者にしか分からない
⑥請求書の発行 経理 ない ○ ○ 2 2 4月に新人へ渡す予定
⑦入金の確認 経理 ない ○ ○ 2 3

記入例の7工程は架空のもので、業種は決めずに並べています。

書く順を付ける決まりは、次のとおりです。

  • 手順書の状態が「ある」で、印が0の工程は書かない
  • 「あるが古い」工程は、新しく書かずに今の手順書の整理へ回す
  • 「ない」で印が0の工程は、印の付いた工程が片付くまで後回しにする
  • 印の数が同じなら社長への確認が集まる工程を先にし、それでも並べば新人や別の担当者に渡す予定が近い工程を先にする

記入例では、⑥請求書の発行と⑦入金の確認に、どちらも印が2つ付いています。⑥は4月に新人へ渡す予定があるので、⑥を2番、⑦を3番にしました。

手順書が「あるが古い」工程は、整理に回す前に、その手順書が現場で使われているかどうかで仕分けます。仕分けるときの物差しは、マニュアル整理の進め方の記事で説明したとおりです。

チェック

マップを埋め終えたら、次を確かめてください。

  • 工程名が、フロー図の箱の言葉と同じになっているか
  • 書く順の数字が、ほかの行と重なっていないか

最初の1枚の手順書は、誰に読んでもらうか

最初の1枚は、その工程をまだやったことのない新人に読んでもらいます。書くのは、書く順1番の工程だけです。

全工程の手順書がそろうまで出さずにいると、1番の工程で起きている迷いも、そのあいだ残り続けます。まだ粗い段階の手順書を1枚、先に現場へ出し、直しながら仕上げていきます。

1枚に入れるのは、作業の始まりと終わり、1行に1つの動作、判断の分かれ目です。始まりと終わりは、前の工程から何を受け取り、次の工程へ何を渡すかで書きます。判断の分かれ目には、どちらに進むかの条件を書き添えます。

新人に渡す前に、書いた行ごとに「それ、新人にできますか?」と自分に聞き直してください。読んでもらうときは、新人が手を止めた行・読み返した行・やり直した行に○を付けてもらいます。○の付いた行が、次に書き足す行です。

⑤納品のように、担当者の頭の中にしかなく、今は話を聞く時間も取れていない工程は、書く前に聞き取りが要ります。1人が長く受け持ってきた仕事を聞き出す手順は、技能伝承のマニュアル化で説明しています。

読む人がほかの会社で同じ仕事をしてきた経験者なら、工程の全部を書かなくても足ります。前の職場とのやり方の違いだけを渡す書き方は、中途採用が即戦力にならない理由で扱いました。

1枚できたら、マップの手順書の状態を「ある」に直し、書く順の欄を「済」にします。新人の○が0になれば、その工程の手順書はひとまず仕上がりです。

新人に読んでもらう前に、書き上げた1枚をマニュアル品質診断ツールに入れておくと、再現性や検索性などの観点で書き方を先に見直せます。費用はかからず、入れたファイルは診断後に破棄されます。

業務フローから手順書を作るときのよくある質問

手順書マップは、図が粗くても、手順書が半分ほど手元にあっても埋められます。

Q1. 工程が多すぎて、印を付けきれません

図の中で、始まりから終わりまでいちばん長くつながっている1本の流れだけを先に写してください。枝分かれした例外の流れは、その1本のマップができてから行を足します。

Q2. 手順書がすでに半分ほどあります

手順書の状態の列で、「ある」と「あるが古い」を分けます。「ある」で印が0の工程には手を付けず、「あるが古い」は整理へ回します。残った「ない」の工程にだけ、印の数で書く順を付けてください。

Q3. そもそも業務フロー図がありません

図を描き上げる前に、いちばん長い流れの工程名を、始まりから終わりまで1行ずつ書き出してください。その一覧をマップの工程の列に写せば、印は付けられます。図は、手順書が何枚かできてから描けば足ります。

まとめ|印の多い工程から手順書を1枚ずつ

手元の業務フロー図を開き、工程名を手順書マップの工程の列に写すところから始めてください。担当者に聞いて印を付ければ、書く順1番の工程が決まります。その1枚を読んだ新人が作業を止めずに進められたら、マップの次の行へ移ります。

マップで1番が決まっても、担当者への聞き取りや書き起こしに社内の手が回らないことはあります。2.1は、これまで650社を支援してきました。業務の流れを見える化して手順書にするマニュアル作成支援も、その仕事の1つです。工程の中身は2.1が御社の担当者に伺いながら書き起こし、優先する工程は御社で決めていただきます。

1番の工程から手順書にする

内容を確認後、担当者よりご連絡いたします。