「手順書を作る前に、まず業務を全部洗い出して」と頼まれ、表計算ソフトに業務名を打ち始めた。初日は20行まで進んだ。翌週は日々の仕事に押されて手が止まり、ファイルを開くたびに足りない行が見つかる。

洗い出しが終わらないのは、どこで止めるかを決めないまま書き始めるからです。止める時刻を先に決めれば、洗い出しの一覧は次の手順書を選ぶ材料として使えます。

この記事の結論

  • 業務の洗い出しは、最初の1回を30分で止める
  • 「30分で切り上げる洗い出しシート」の列は、業務名・いま回している人・自分で説明できるか(○/×)の3つだけにする
  • 時刻が来たら書きかけの行も消さず、書ききれなかった業務は「次の30分」欄に名前だけ書く
  • ×の行の「いま回している人」が次に話を聞く相手になり(同じ人の行は1人と数える)、○の中から1つを次に書く手順書に選ぶ

業務の洗い出しが終わらないのは、止める時刻がないから

書き始めたファイルには、いつ書き終えるかがどこにも書かれていません。業務は書いているあいだにも思い出されて増えるので、「全部そろったら次へ」という順番では、次に進む日が来ません。

1行にどこまでの作業を含めるかの迷いも、手が止まる原因です。「請求書の発行」と「請求書の宛名の確認」を別の行にするかで考え込み、そこから先が書けなくなります。

洗い出しを頼まれるのは、新人が入る前、担当者が辞める前、事業承継の前のような節目です。社長の仕事から書き出す場合は、手帳とカレンダーを使う進め方を事業承継前の業務の見える化で説明しました。

業務の洗い出しは30分で止める

最初の洗い出しは、30分たったら手を止めます。手順書を1枚書くための一覧は、30分で書き出した業務で十分です。

私は、最初の洗い出しを30分で切り上げるよう勧めてきました。30分で埋まった一覧は、出来でいえば30〜40点でも、次に書く1枚を選ぶには足ります。

30分の枠は、日々の仕事を止めずに予定表へ入れられる長さです。漏れた業務は2回目の30分で足し、手順書を書く途中で見つかった業務もその時点で足します。

30分の洗い出しの始め方と止め方

洗い出しには、部署ごとに時間をかけて全業務をそろえる進め方もあります。目的が違うので、2つの進め方は合う場面も別です。

比べる点 30分で止める洗い出し 全業務をそろえる棚卸し
目的 次に書く手順書を1つ選ぶ 業務量や分担を見直す
時間の区切り 1回30分で止める 全業務がそろうまで続ける
列の数 3つ 頻度・所要時間など多い
終わった後 ×の相手に聞き、○から1つ書く 配置や分担を決め直す

この止め方が合うのは、手順書を1枚目から書き始めたい会社です。人の配置を見直すのが目的なら、時間をかけて全業務をそろえる進め方が合います。

業務の洗い出しシート|3列を30分で埋める

シートの列は、業務名、いま回している人、自分で説明できるかの3つだけです。列を増やすと1行に書く量が増え、30分で書ける行数が減ります。

シートの3列の書き方

  • 業務名:相手に渡す物か、相手から受け取る物の名前で書く(「見積書の作成」「入社書類の回収」)。「営業」「事務」のような部署の名前だけで書かない
  • いま回している人:名前でなく役割で書く(「経理」「店長」)。名前で書くと、その人が異動した日に一覧が古くなる
  • 自分で説明できるか:書いている人が、その業務の進め方を人に説明できれば○、できなければ×を付ける

1行に含める作業の範囲で迷ったら、範囲が広いほうの業務名を書いて先へ進み、分けるかどうかは手順書を書く段階で決めます。

シートは表計算ソフトでも紙でもかまわないので、次の3行をそのまま写して使ってください。

洗い出しシート( 月 日  時 分〜 時 分)
業務名 / いま回している人(役割) / 自分で説明できるか(○・×)
次の30分:

記入例(8行)

業務名 いま回している人 自分で説明できるか
請求書の発行 経理 ○
見積書の作成 営業 ×
入社書類の回収 総務 ○
備品の発注 総務 ○
取引先へのあいさつ状の送付 社長 ×
給与の振込データの作成 経理 ×
社用車の点検の予約 営業事務 ○
来客用の会議室の予約 総務 ○

記入例は架空のもので、従業員30名ほどの会社で総務を兼ねる課長が、30分で書いた想定です。「次の30分」欄には、「現場の安全書類の提出」「採用面接の日程調整」の2つを名前だけ書きました。

30分で止めるときの決まり

始める前に、シートの上の欄へ終わりの時刻を書き入れます。時刻を書かずに始めると、30分を過ぎても切りのいい所まで続けてしまいます。

  • 時刻が来たら、書きかけの行も消さずに残す。業務名だけの行でもよい
  • 書ききれないと分かっている業務は、名前だけを「次の30分」欄に書く
  • 印のない行には、シートを閉じる前に○か×を付ける。迷ったら×にする

チェック

シートを閉じる前に、次を確かめてください。

  • 業務名の列に、部署の名前だけの行が残っていないか
  • いま回している人の列に、個人の名前が入っていないか
  • ×の行の、いま回している人が空欄になっていないか

業務を洗い出した後|×の行と○の行の使い方

×の行は人に聞く業務で、○の行は自分で手順書に書ける業務です。シートを閉じたら、×の行の相手に聞く予定を入れ、○の中から1つを選びます。

洗い出しシートの○と×の行の使い分け

×の行の「いま回している人」が、次に話を聞く相手

記入例の×は3行で、聞く相手は営業・社長・経理の3人です。

同じ人が×の行を2つ以上回していれば、その人には1回でまとめて聞きます。聞くのは、その人が回している×の業務だけです。聞いた内容は、その業務の行の横に一言ずつ書き足していきます。

ベテランが長く1人で受け持ってきた業務は、短い聞き取りでは内容をつかみきれません。在籍中に判断の基準まで聞き出す進め方は、技能伝承のマニュアル化の手順を使ってください。

いま回している人がすでに辞めていて、本人に聞けない業務もあります。送信済みメールや請求書の控えから仕事をたどる方法を、退職代行で引き継ぎがないときの拾い出し方にまとめました。

同じ業務を2人以上が回しているなら、聞く前に、それぞれに進め方を書いてもらって見比べる方法があります。介護の手順書の作り方で紹介した進め方では、書いてもらった手順を段階ごとに横に並べ、違いのある行についてだけ書いた本人に聞きます。介護以外の業務でも、進め方は同じです。

注意

×の数を、書いた人や回している人の評価に使わないでください。×は、進め方がまだ文字になっていない業務の印です。評価に使うと、次の30分から×が付かなくなり、聞くべき相手が見えなくなります。

○の中から、次に書く手順書を1つ選ぶ

○の行から選ぶのは1つだけです。来月までに別の人へ渡す予定がある業務を先にし、予定がなければ月に何度も繰り返す業務を選びます。

記入例の会社では、次に入社する新人の書類集めを、来月から総務の別の人に任せる予定だとします。この場合は、入社書類の回収が1つ目の候補です。選んだ1つを手順書にする進め方は、業務フローの手順書の作り方で説明しています。

手順書がすでにある業務は、そのままでは候補から外れます。外す前に、その手順書をマニュアル品質診断ツールに入れてみてください。再現性や検索性などの観点から書き方の評価が返ってくるので、評価の低い手順書は書き直す候補として残します。PDF・Word・テキストのファイルに対応し、費用はかかりません。

業務の洗い出しの前に、先に片付けること

マニュアルがすでに何本もある会社と、どの業務の確認も社長に回ってくる会社は、30分の洗い出しより先に手を付ける所があります。

マニュアルが共有フォルダに何本もある

古い版と今の版が混ざったまま洗い出すと、シートの行とマニュアルの題名が二重になります。先に、使われているマニュアルと使われていないマニュアルを分けるマニュアル整理を済ませてください。

整理が済んだら、手順書がある業務は、シートの業務名の横に「手順書あり」と書き添えます。○の中から次の1つを選ぶとき、その行は候補から外します。ただし、診断で書き直しが要ると分かった行は候補に残します。

確認がいつも社長に集まっている

どの業務の確認も社長に回ってくるなら、30分の洗い出しの前に決めるのは、社長が担っている判断をどの順で引き継ぐかです。確認が社長に集まる形を変える進め方は、社長が現場から抜けられない理由で扱いました。

業務の洗い出し方法でよくある質問

30分で止めても、漏れた業務は2回目の30分と、手順書を書く途中で拾えます。

Q1. 30分では業務の半分も書けませんでした

それで構いません。2回目の30分を1週間以内に予定表へ入れ、「次の30分」欄に書いた業務から始めてください。1回目のシートに書き足せば、一覧は1枚で済みます。

Q2. 洗い出し用のエクセルのテンプレートはありますか?

専用のファイルを用意しなくても使えます。表計算ソフトの1行目に3列の見出しを打てば、この記事のシートになります。列を足したくなったら、○と×の数を数え終えてから足してください。

Q3. 部署の全員で一度に洗い出したほうがよいですか?

最初の30分は、頼まれた1人で書きます。人を増やすのは、×の行の相手に話を聞く段階からです。全員で書き始めると、同じ業務が人の数だけ別の名前で並びます。

Q4. 業務の棚卸しとは何が違いますか?

言葉としては、ほぼ同じ意味で使われます。違いは目的です。この記事の洗い出しは次に書く手順書を1つ選ぶためのもので、全業務をそろえる棚卸しは業務量や分担を見直すためのものです。上の表のとおり、かける時間も変わります。

まとめ|業務の洗い出しは終わりの時刻から書く

今週の予定表に30分の枠を1つ入れ、シートの上の欄に終わりの時刻を書いてから始めてください。時刻が来たら×の行の相手に話を聞く予定を入れ、○の中から1つを次の手順書に選びます。

記入例の会社なら、営業・社長・経理の3人への聞き取りと、聞いた内容の書き起こしを、2.1のマニュアル作成支援で受け持てます。どの業務を先に手順書にするかは、御社で決めていただく形です。2.1の資料は、資料ダウンロードのページで用途ごとに無料で見られます。

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