2026年度の最低賃金は、全国加重平均で1,177円になりました。発効日は都道府県ごとに異なり、2026年10月1日から12月2日までの間に順次発効する予定です。今は、すでに新しい金額が適用されている地域と、これから発効する地域が混在している時期にあたります。

御社の都道府県の発効日は、もう来ましたか。それとも、まだですか。すぐに答えが出なかった方も、このあと紹介する厚生労働省の一覧を開けば、自社の発効日と金額を確かめられます。

毎年この時期に改定があることは、ニュースで知っている。けれど何をどこまで直せばいいかは、毎年思い出すところから始めている。そんな総務・人事・経理の担当者の方は少なくないはずです。

担当者として怖いことは2つあるはずです。1つは、担当者が自分1人しかおらず、最低賃金を下回った時給のまま給与を払ってしまうこと。もう1つは、毎年同じ作業に同じだけの時間を取られ続けることです。

結論から先に書きます。

この記事の結論

  • 2026年度の最低賃金は全国加重平均1,177円(前年度比+56円)。発効日は都道府県ごとに2026年10月1日〜12月2日の間で異なる
  • 対応は5ステップ。発効日と金額を確認する→全従業員の時給を洗い出す→下回る時給を引き上げる→規程・契約書・求人票を改定する→給与計算・シフトに反映して周知する
  • 直す場所は給与担当・総務・人事・採用・現場にまたがるため、誰が何を直すかを役割で一覧にする
  • 今年の対応を記録に残し、来年は担当者の記憶に頼らず、手順書と年間業務フローで対応する

最低賃金改定、対応は済んでいますか

改定のニュースを見て、パートの時給も上げた。それで対応は済んだと考えていないでしょうか。次の3つのうち1つでも当てはまれば、対応はまだ途中です。

  • 自社の都道府県の発効日を、まだ確認していない
  • 去年どこを直したかの記録がなく、今年も担当者の記憶を頼りに洗い出している
  • 時給は上げたが、求人票には去年の金額が載ったまま

いちばん気づきにくいのは3つ目です。求人票は給与計算の担当者が普段見る書類ではないため、誰かに指摘されるまで古い金額のまま掲載され続けることも珍しくありません。

口頭の引き継ぎにも、気づかないまま抜けが残る落とし穴があります。私はよく「人は10言って3しかわからない」とお伝えしています。去年の担当者から口頭で聞いた手順も、今年の担当者には一部しか届いていないと考えたほうが安全です。抜けが出るのは、担当者の注意力が足りないからとは限りません。原因は、毎年の手順を口頭だけで引き継いでいる仕組みの側にあります。

最低賃金の発効日は、近年は年に1回やってくる節目です。抜けが起きやすい日であり、手順を文字にし直すきっかけにできる日でもあります。

2026年度の最低賃金改定の内容

対応に入る前に、今年の改定の中身を厚生労働省の発表で押さえておきます。扱うのは、金額、引上げ額、発効日の3点です。

厚生労働省が2026年9月3日に公表した答申の取りまとめによると、2026年度の地域別最低賃金の全国加重平均額は1,177円。前年度の1,121円から56円の引上げとなりました。47都道府県すべてで54〜65円の引上げです。全国加重平均の56円という引上げ額は、目安制度(中央最低賃金審議会が引上げ額の目安を示す仕組み)が昭和53年度に始まって以来、2番目の高さとされています。

発効日は都道府県ごとに異なり、2026年10月1日から12月2日までの間に順次発効する予定です。この記事の公開日(2026年10月4日)の時点では、すでに新しい金額が適用されている地域と、これから発効する地域が混在しています。

自社が該当する都道府県の金額と発効日は、厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」で確認してください。拠点が複数の都道府県にある会社は、拠点ごとに該当する欄を見ます。

出典:

注意

ここまでの制度の説明は、厚生労働省の公開資料の範囲に留めています。就業規則の具体的な改定手続きや、自社の賃金体系が最低賃金法に照らして適切かどうかの最終確認は、社会保険労務士にご相談ください。

最低賃金の改定対応でつまずく3つの課題

最低賃金の改定対応でつまずく場所は、大きく3つに分かれます。時給の確認、書類の更新、毎年の繰り返しです。

課題1|時給が下回っていることに気づかない

時給テーブル(職種や経験年数ごとに時給を決めた表)を毎年の昇給に合わせて組んでいる会社でも、下の段が改定後の最低賃金に届かないことがあります。気づくのが次の給与計算の直前だと、計算のやり直し、本人への説明、契約書の差し替えが一度に押し寄せます。気づいてから慌てて直す作業が、改定対応でいちばん時間を食う部分です。

私は、仕事の生産性を邪魔するものを「悩む・迷う・やり直す」の3大悪と呼んでいます。時給の見落としは、3大悪のうちの「やり直す」を、給与計算の締め切り間際に呼び込むもの。発効日の前に全員の時給を一度洗い出しておけば、締め切り間際のやり直しは避けられます。

課題2|規程と契約書の更新が漏れる

給与計算システムの時給を上げたところで、作業が終わった気になりやすいものです。就業規則や給与規程(時給の金額を書いている場合)、雇用契約書(労働条件通知書)、求人票の3つが後回しになり、書類上の金額と実際の支給額がずれたまま残ります。

書類を直す担当は、給与計算の担当とは別の人であることが多いはずです。直す場所が部署をまたぐと、「誰かが直しただろう」という思い込みで抜けが生まれます。

課題3|毎年同じ作業を記憶でやり直している

担当者が変わった年に、去年の手順を誰も引き継いでいなかった。確認すべき項目を一から洗い出すところから始まる、というのはよくある流れです。

私がお伝えしているマニュアルサイクルは、「可視化→仕組化→習慣化」の3段階。可視化はやり方を文字にする段階、仕組化は文字にした手順を業務の流れに組み込む段階、習慣化は更新を繰り返して現場の当たり前にする段階を指します。毎年の改定対応を一から洗い出している会社は、毎年「可視化」からやり直している状態です。仕組化まで進んでいないので、担当者が変わるたびに振り出しに戻ります。

3つの課題に共通するのは、手順が担当者の頭の中にしかないことです。

そのマニュアル、現場で使われていますか

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最低賃金改定への対応手順

ここからは実際の対応手順に入ります。5つのステップで進め、あわせて誰がどの書類を直すかを一覧にします。

最低賃金改定に対応する5ステップ

対応の順番は次のとおりです。

  1. 発効日と新しい時給額を確認する:厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」で、拠点がある都道府県の欄を確かめます。
  2. 全従業員の時給を洗い出す:パート・アルバイトに限らず、月給制の社員も時間あたりの金額に換算して、新しい最低賃金と並べるのがこの段階です(出典:厚生労働省「最低賃金特設サイト」)。
  3. 下回っている時給を引き上げる:発効日以降の勤務分から新しい金額以上で支払えるよう、発効日より前に改定を済ませます。
  4. 規程・契約書・求人票を改定する:就業規則や給与規程に書いた金額、雇用契約書(労働条件通知書)、掲載中の求人票を、新しい時給にそろえる工程です。
  5. 給与計算・シフトに反映して周知する:給与計算システムの時給とシフト表の人件費の見込みを更新し、対象の従業員に新しい時給と適用日を伝えます。

最低賃金改定への対応5ステップ

正直、求人票と並んで抜けやすいのが、5つ目の周知です。給与明細を見て初めて時給が変わったと知る伝わり方では、本人が「何か間違っているのでは」と不安になります。

ステップ1〜3で迷ったら、確かめる問いは2つだけです。

  1. 今の時給は、新しい最低賃金額以上か
  2. 自社の都道府県の発効日は、もう来ているか

1つ目が「はい」なら、今の時給のまま運用を続けます。1つ目が「いいえ」で発効日がもう来ていれば、至急の改定が必要です。まだ来ていなければ、発効日までに改定を済ませる段取りを組みましょう。

自社の時給が新しい最低賃金を下回っていないかの判定フロー

月給制・歩合制など、時給以外の賃金形態の換算方法は、社会保険労務士にご確認ください。

最低賃金改定で誰が何を直すか一覧にする

5つのステップを回すうえで抜けやすいのが、担当の境目です。一例として、直す場所と担当を並べると次のようになります。

  • 時給テーブル・給与計算システム:経理・給与担当が、新しい時給を入力する
  • 就業規則・給与規程:総務担当が、金額を書いている箇所を改定する
  • 雇用契約書(労働条件通知書):人事担当が、新しい時給の記載に直す
  • 求人票・採用サイト:採用担当が、掲載中の時給を更新する
  • シフト表:現場の管理者が、人件費の見込みを直し、本人に伝える

最低賃金改定で誰が何を直すかの分担

一覧を作るとき、私が使う物差しは「それ、新人にできますか?」という問いです。今年担当した人が来年いなくても、別の人が同じ一覧を見て同じ順番で直せるか。答えが「いいえ」なら、一覧の書き方を変えます。担当欄には個人名を書かず役割で書いておくと、異動や退職があっても一覧がそのまま使えます。

ポイント

一覧には、担当の役割に加えて「いつまでに直すか」も書き込んでください。

  • 時給の引上げと給与計算システムへの入力:発効日の前日まで
  • 規程・契約書・求人票の改定:発効日まで
  • 対応記録:給与計算を終えた週のうち

期限は一例です。自社の締め日と発効日に合わせて決めてください。

来年の最低賃金改定で同じ作業を繰り返さない

最低賃金は、近年は毎年改定されています。今年の対応を今年だけの作業として片づけると、来年また一から思い出すところに戻ります。

私がおすすめしているのは、改定対応を年に1回やってくる業務として、年間業務フロー(1年のどの時期に何の業務をするかを並べた表)に組み込むことです。2026年度は、厚生労働省が答申の取りまとめを公表したのが9月3日でした。来年の同じ時期に「発効日と金額を確認する」予定を、年間業務フローへ先に書き込んでおきます。

最初から100点の手順書を目指す必要はありません。今年はまず、何をいつ誰が直したかの記録を残すだけで十分です。マニュアルは生き物で、来年その記録を見ながら直した箇所を足していけば、手順書は年を追うごとに育ちます。

チェック

今年の対応記録には、次の4つを残します。

  • 確認した日と、確認した都道府県・金額
  • 時給を引き上げた従業員の人数と、引上げ後の時給
  • 直した書類の名前と、直した担当
  • 次回に向けた気づき(抜けそうになった箇所)

毎年来る改定を、担当者の記憶に頼らず、手順書と年間業務フローで回す。私達がマニュアル作成支援と業務の見える化でお手伝いしているのは、社内にこの回し方を根づかせることです。

担当者の頭の中にある判断を記録で残す考え方については、関連コラム「技能伝承をマニュアル化で進める4つの手順」もあわせてご覧ください。

最低賃金改定の対応でよくある失敗

改定対応でつまずく場所は、会社が違ってもだいたい似ています。代表的な4つの失敗と、それぞれの手当てを並べます。

  • 一部の店舗・部署だけ時給の改定が漏れる:拠点ごとの担当が自分の拠点だけを見ていると起きます。全拠点の時給を1つの表に並べて確かめます
  • 時給は上げたが、求人票の掲載金額が古いまま:掲載中の求人票を一覧にし、発効日までに更新します
  • 対応記録が担当者の頭の中にしかない:退職や異動で途切れます。直した書類と担当を、その週のうちに記録に残します
  • 毎年「去年どうしたか」を思い出すところから始まる:記録と年間業務フローがあれば、記録を見返すところから始められます

4つの失敗は、どれも次のチェックリストを1項目ずつ確かめれば防げるものです。

  1. 発効日と金額を確認したか
  2. 時給を洗い出したか
  3. 下回る時給を上げたか
  4. 規程・契約書を直したか
  5. 求人票を更新したか
  6. 給与計算・シフトに反映して周知したか
  7. 対応記録を残したか

チェックリスト7項目を確かめる時期

来年の自分や後任をいちばん助けるのは、チェックリストの最後の項目「対応記録を残したか」です。ほかの6項目は今年の対応を終わらせるための確認で、最後の1項目だけが来年の対応を楽にします。

改定対応を手順書にするのが向いている会社

ここまでの進め方のうち、対応を手順書と年間業務フローに残す部分が、どんな会社に合うかを分けます。自社に近いほうを確かめてから、着手する範囲を決めてください。

手順書にするのが向いている会社

  • パート・アルバイトを多く雇用し、最低賃金に近い時給で働く人がいる
  • 店舗・拠点が複数あり、都道府県ごとに発効日を管理する必要がある
  • 毎年の改定対応が、特定の担当者の記憶に頼っている

手順書にしなくてよい会社

  • 毎年の改定で下回る人が出ない水準に時給があり、改定対応の手順も文書になって引き継がれている

手順の文書化まで済んでいる会社が次に確かめるのは、その手順書が毎年見返され、更新されているかどうかです。

最低賃金改定への対応、3つの進め方を比較

改定対応の進め方は、大きく3つに分かれます。分かれ目は、手順を誰の頭の中に置くか、それとも文字にして社内に置くかです。

比較項目 担当者1人に任せる 社会保険労務士に都度相談する 手順書・年間業務フローにする(株式会社2.1の伴走支援)
毎年の確認漏れの防ぎやすさ △ 担当者の記憶しだい ◯ 相談した論点は確かめられる ◎ 確認項目と時期が手順書に残る
複数拠点・複数担当への対応 △ 作業が1人に集中する △ 社内の分担は自社で決める ◯ 誰が何を直すかを役割で決める
来年以降への引き継ぎやすさ △ 異動・退職で途切れやすい △ 相談内容の記録は自社しだい ◎ 社内で更新できる形で渡す
得意なこと 小さく早く動ける 法令に照らした個別の判断 社内の手順と分担の見える化

3つは、組み合わせて使うこともできます。法令に照らした判断は社会保険労務士に、社内の手順と分担は手順書に、と役割を分けると、毎年の対応が担当者1人に偏りません。

改定対応が1人に偏るのは、その人のスキルの問題とは限りません。仕事の設計の問題です。人は分かり合えない前提に立ち、伝わらない部分を仕組みで補う。私達が手順書と業務フローを作るときの考え方です。

私達は完全丸投げのご依頼をお受けしていません。成果は二人三脚でしか生まれないからです。手順書づくりは、実際に対応した担当者の方へのヒアリングから始めます。

最低賃金改定の事例ではありませんが、マニュアルを整備した支援の例を2件挙げます。

  • ベテラン営業が多い会社:157ページのマニュアルを整備し、新人研修期間を40%短縮
  • 介護事業を営む支援先:離職率が28%から7%に、未経験者の定着率が41%から75%に改善

私達は創業2014年から12年、650社の業務マニュアル作成と業務の見える化を支援してきました。私自身は内閣官房「業務の抜本見直し推進チーム」のアドバイザーとして、霞ヶ関の全府省・対象1,440課の標準化に関与しています。

最低賃金改定のよくある質問

最低賃金の改定対応について、担当者の方から出やすい質問を4つ取り上げます。期限、対象者、確認先、仕組み化の順です。

Q1. 下回っていたら、いつまでに時給を上げる?

発効日より前です。発効日以降は、新しい最低賃金額以上の賃金を支払う必要があります。給与の締め日と発効日がずれる月の計算方法や、すでに下回っていた場合の対応は、社会保険労務士にご確認ください。

Q2. 正社員にも最低賃金は関係しますか?

関係します。最低賃金は雇用形態を問わず適用され、月給制の人は時間あたりの金額に換算して比べます。なお、産業別の特定最低賃金が定められている業種では、地域別と特定の両方が適用される労働者に、高いほうの金額以上を支払う必要があります。換算の方法や、手当のうちどれを含めるかは、社会保険労務士にご確認ください。

出典:厚生労働省「最低賃金特設サイト」

Q3. 自社の発効日はどこで確認できますか?

厚生労働省の「地域別最低賃金の全国一覧」で確認できます。拠点が複数の都道府県にある場合は、拠点ごとに該当する欄を確かめてください。

Q4. 改定対応を仕組み化するには?

今年の対応を記録に残し、来年の同じ時期に見返す予定を年間業務フローに入れるところから始めます。記録する項目は、確認した日と金額、引き上げた人数と時給、直した書類と担当、次回への気づきの4つで足ります。来年はその記録を手順書の初版にして、直した箇所を足していけば十分です。

まとめ|最低賃金改定、今日からできる対応

2026年度の最低賃金改定は、都道府県ごとに2026年10月1日から12月2日までの間で発効します。対応は、発効日と金額の確認、時給の洗い出し、引上げ、規程・契約書・求人票の改定、給与計算・シフトへの反映と周知の5ステップです。直す場所は部署をまたぐので、誰が何を直すかを役割で一覧にしておきます。

マニュアルサイクルでいえば、今年の対応を記録に残すところまでが可視化にあたります。来年その記録を見返し、年間業務フローに組み込んで同じ順番で回せたときが、仕組化まで進んだ状態です。今年の対応を記録し、来年は担当者の記憶に頼らず手順書で改定に対応できる状態を作ること。毎年の更新が当たり前になった段階が、習慣化にあたります。

今日からできることは1つです。今年の改定で直した書類と担当を、メモ1枚に書き出してください。書き出したメモ1枚が、来年の手順書の最初の1ページになります。

毎年の改定対応を、手順書で回したい方へ

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相談だけでも歓迎です。売り込みはしません。内容を確認後、担当者よりご連絡いたします。