2026年10月1日から、カスタマーハラスメント(カスハラ)への対策が事業主の義務になりました。社内に方針のメールは流したものの、窓口で怒鳴られたときに誰が出ていくのかは先月と同じまま。そんな状態で施行日を迎えた会社は少なくないはずです。
本当の気がかりは、書類がそろっていないことより、別のところにあるのではないでしょうか。何かあったとき、「会社は現場を守ってくれない」と従業員に思われること。そして、怒鳴る相手の前に、管理者の自分が毎回立ち続けることです。
結論から先に書きます。
この記事の結論
- 厚生労働省が示す措置を並べただけの方針文書は、現場で開かれない
- カスハラ対応マニュアルの中心は、「どこからがカスハラか」「誰に、いつ引き継ぐか」という現場の判断基準
- 判断基準は「新人やパート・アルバイトが同じ答えを出せるか」で書く
- 作り方は4ステップ。事実と方針を確認する→判断基準を書き出す→手順と引き継ぎ先を図にする→周知して運用を回す
- 最初の版は30〜40点で出し、対応の記録を見ながら更新する
施行後も対応は変わっていませんか
施行日を境に、社内の規程は変わったかもしれません。では、窓口や電話口での動きはどうでしょうか。次の3つのうち1つでも当てはまるなら、現場の対応はまだ施行前のままです。
- 方針を社内メールで一斉送信し、それで終わっている
- 窓口の担当者によって、謝り方も引き取り方も違う
- 「これって普通のクレームでは」と、現場が自分の判断で我慢している
いちばん見えにくいのは3つ目です。我慢した本人が報告しない限り、管理者はその出来事を知りません。知らないまま、同じ相手からの電話が翌週も同じ人に回ります。
「カスハラ対応は相手しだいで、マニュアルにはできない」。そう考える方もいると思います。けれど、相手しだいで変わるのは言動のほうです。受け止める側の判断の順番と、引き継ぐ段階は、前もって決めておける部分です。判断が多い仕事ほど、判断の物差しを文字にしておく価値があります。
法改正の施行日は、先送りしてきた整備を始める節目でもあります。「いつかやる」が通用しなくなった今が、現場の物差しを書き始める時期です。
カスハラ義務化で確認すべきこと
マニュアルの章立てを決める前に、制度の中身を厚生労働省の資料で押さえておきます。扱うのは、施行日と根拠の法律、カスハラの定義、事業主が講じる措置の3点だけです。
改正労働施策総合推進法の施行により、2026年10月1日から、カスハラへの対策を講じることが事業主に義務づけられました。事業主が講じる措置の内容は、厚生労働省が指針で定めたものです。
出典:
カスハラの定義は3つの要素
リーフレットでは、次の(1)〜(3)をすべて満たすものをカスハラとしています。電話やSNS上の言動も含まれます。
- 顧客等の言動であって
- その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたものにより
- 労働者の就業環境が害されるもの
現場が迷うのは、2つ目の「社会通念上許容される範囲を超えた」かどうかの見極めです。この線引きを自社の言葉に置き換える作業が、後半で説明する作り方の中心になります。
事業主に義務づけられる10項目
リーフレットが示す、事業主が講じなければならない措置は次のとおりです。後の章では、この丸数字で各項目を参照します。
- 方針の明確化・周知啓発
- ①毅然とした対応と労働者保護の方針を明確にし、周知する
- ②カスハラの内容と、あらかじめ定めた対処の内容を周知する
- 相談体制の整備
- ③相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知する
- ④相談窓口の担当者が適切に対応できるようにする
- 事後の迅速かつ適切な対応
- ⑤事実関係を迅速・正確に確認する
- ⑥被害者への配慮のための措置を講じる
- ⑦再発防止のための措置を講じる
- 抑止のための措置
- ⑧特に悪質なケースへの対処方針をあらかじめ定め、体制を整備する
- その他
- ⑨相談者等のプライバシーを保護する
- ⑩相談したことを理由とする不利益な取扱いを禁止する
10項目は、会社として講じる措置の一覧です。自社の窓口で誰が、どの場面で、どう動くかは、各社が自分で決めて書くことになります。それを書いた文書が、カスハラ対応マニュアルです。
注意
ここまでの制度の説明は、厚生労働省の公開資料の範囲に留めています。個別のケースがカスハラに当たるかどうかの判断や、自社の対応が指針に沿っているかどうかの最終確認は、社会保険労務士・弁護士にご相談ください。
マニュアル整備でつまずく3つの課題
施行に合わせて動き出したのに、現場の対応が変わらない。業務マニュアルの支援で私達が見てきた「作ったのに使われない」パターンを当てはめると、つまずく場所は3つに分かれます。
課題1|何がカスハラか現場で意見が割れる
同じ相手の同じ電話でも、受け止め方は人によって割れます。ベテランの店長は「あれは普通のクレームだよ」と言い、入社3か月のスタッフは「怖くて何も言えなかった」と振り返る。どちらかが間違っているわけではありません。2人が同じ物差しを持っていないだけです。
線引きが文字になっていないと、判断は対応した人の経験と度胸で決まります。経験の浅い人ほど、相手を前にして悩み、上に報告すべきか迷い、あとで対応をやり直すことになります。この「悩む・迷う・やり直す」が、私の言う仕事の3大悪です。カスハラ対応の現場では、3大悪がそのまま従業員の心を削っていきます。
課題2|誰にいつ引き継ぐかが決まっていない
エスカレーション(上位の担当者への引き継ぎ)の先が、「とりあえず店長」としか決まっていない店舗は珍しくありません。店長が休みの土曜日、長引く電話を受けたアルバイトは、誰にも渡せないまま1時間以上電話口に立ち続けます。
引き継ぎ先が役職1つだけだと、その人がいない時間帯に現場が孤立します。決めておくのは3つです。誰に引き継ぐか。どの段階で引き継ぐか。引き継ぎ先が不在なら、次は誰か。
課題3|作って終わり、更新も訓練もされない
施行に合わせて方針文書を作り、全員に配った。1年後、中身を覚えている人は誰もいない。業務マニュアルでもよく起きる流れです。
私がいつもお伝えしているマニュアルサイクルは、「可視化→仕組化→習慣化」の3段階です。可視化は、やり方や考え方を文字にする段階。仕組化は、書いた内容を手順や引き継ぎの流れに組み込む段階。習慣化は、訓練と更新を繰り返して現場の当たり前にする段階です。方針文書を配った時点は、まだ可視化の入口に立ったところです。
3つの課題は、どれも方針を書いたところで手が止まっていることから起きています。線引きを書いていない(課題1)、引き継ぎ先を書いていない(課題2)、書いた後に回していない(課題3)。
カスハラ対応マニュアルの作り方|項目と手順
作り方は、方針文書との違いを押さえるところから始めます。次に扱うのが、厚生労働省の10項目とマニュアルの章立ての対応づけです。そのうえで、判断基準の書き方と4つの手順を示します。
定義:カスハラ対応マニュアルとは
カスハラ対応マニュアルとは、顧客等からの言動に現場の従業員が直面したとき、何を基準に判断し、どう動き、誰へ引き継ぐかを書いた文書です。
似た文書に方針文書があります。方針文書は「会社がどう考えるか」を、対応マニュアルは「現場がどう動くか」を書く文書です。
| 比較項目 | 方針文書 | カスハラ対応マニュアル |
|---|---|---|
| 書く内容 | 会社の姿勢(毅然と対応し、従業員を守る) | 判断基準・初動の手順・引き継ぎ先・記録の方法 |
| 使う人 | 全従業員 | 窓口・電話・店舗で対応する人と、その管理者 |
| 使う場面 | 周知・研修 | 相手を前にして迷ったとき |
どちらか一方では足りません。①の方針は方針文書として1枚にまとめ、対応マニュアルの第1章に綴じ込みます。②以降の多くは、第2章から先に書く現場の動き方です。
厚労省の措置とマニュアル項目の対応
10項目を、対応マニュアルの8つの章に対応づけると次のようになります。
| 厚生労働省の措置 | 対応するマニュアルの章 |
|---|---|
| ①方針の明確化と周知 | 第1章 方針 |
| ②カスハラの内容と対処の周知 | 第2章 定義と線引き/第3章 初動対応の手順 |
| ③相談窓口の設置と周知 | 第6章 相談窓口 |
| ④相談窓口担当者の対応 | 第6章 相談窓口/第8章 教育・訓練 |
| ⑤事実関係の確認 | 第5章 記録様式 |
| ⑥被害者への配慮 | 第7章 被害者ケア |
| ⑦再発防止 | 第5章 記録様式/第8章 教育・訓練 |
| ⑧悪質なケースへの対処方針と体制 | 第4章 エスカレーション基準 |
| ⑨プライバシーの保護 | 第6章 相談窓口 |
| ⑩不利益取扱いの禁止 | 第1章 方針 |

並べてみると、方針文書1枚では書ききれない章が7つ残ります。章立てに落とすとき抜けやすいのが、⑧の悪質なケースへの対処方針です。警察へ通報する基準、出入りを断ると決める人、警告文を出す手順。どれも方針文書には書きにくく、後回しになりやすい部分です。
第2〜5章と第8章の書き方は、この後の判断基準・4ステップ・判定フロー・記録シートで扱います。後の節で触れない第6章と第7章の中身は、次のとおりです。第6章の相談窓口(カスハラを受けた従業員が相談する社内の窓口)には、相談窓口の担当者と連絡手段、従業員から相談を受けたときに聞き取る順番、相談内容を共有する範囲を書きます。第7章の被害者ケアには、対応した従業員をいったん現場から離すかどうかを決める人と、その後に誰が声をかけるかを書き込みます。
現場の判断基準を文字にする
判断基準を書くとき、私が使う物差しは1つです。「それ、新人にできますか?」。ベテランの店長が空気で分かる線引きについてこう問うと、答えはたいてい「できない」です。入社1週間のアルバイトに、空気は伝わりません。
どこからがカスハラかの線引きは、会社が決めてマニュアルに書きます。現場のスタッフに求めるのは、その場でカスハラと断定することではありません。書かれた線引きに照らして、「1人で対応を続けるか、引き継ぐか」を決めることだけです。判断基準は、この一点を新人が迷わず決められるように書きます。
基準の中身は、店長やベテランに数字を先に出して聞くと引き出せます。「新人なら、同じ要求が何回続いたら責任者に代わるべきですか。3回ですか、5回ですか」。数字を当てにいくと、本人が無意識に使っている線引きが言葉になって出てきます。
ポイント
判断基準は「動作」と「回数・時間」で書きます。
- 新人には使えない例:悪質な場合は責任者に相談する
- 新人にも使える例:同じ要求を3回繰り返されたら、責任者に交代する
- 新人にも使える例:通話が30分を超えたら、責任者に状況を伝える
回数と時間は一例なので、自社の業態に合わせて決めてください。
作り方4ステップ
カスハラ対応マニュアルは、次の4ステップで作ります。
- 事実と方針を確認する:厚生労働省のリーフレットで10項目を確認し、自社の現状と並べます。過去の苦情の記録や、現場で「困った対応」として話題になった出来事も集めます
- 判断基準を書き出す:集めた出来事を「通常のクレーム対応で続けたもの」と「引き継いだほうがよかったもの」に分け、境目を動作と回数で書きます
- 手順と引き継ぎ先を図にする:図に描くのは、初動を受ける人、引き継ぐ段階、引き継ぐ相手の3つ。責任者がいないときの2番手・3番手まで書き込みます
- 周知して運用を回す:全員に説明し、ロールプレイで最低1回は練習します。次に改定する日も、この時点で決めておきます

正直、いちばん時間がかかるのは2つ目の工程です。判断基準は、会議室で考えるより、現場の実例から書き出すほうが早く固まります。4つ目の周知と運用までを作り方に含めているのは、3つ目で止めると課題3の「作って終わり」に戻るからです。
迷ったときの判定フローと記録シート
判断基準を書いても、相手を前にすると迷う場面は残ります。迷ったときに現場で使う判定フローと、後から振り返るための記録シートを、マニュアルに入れておきます。
「カスハラかも」と迷ったときの判定フロー
一例として挙げるのは、3つの問いで分岐させる形です。
- 要求の中身が、商品・サービスと関係ないか、著しく過大か
- 身体的・精神的な攻撃や、威圧的な言動があるか
- 対応が不当に長時間になっているか、執拗に繰り返されているか
1つでも「はい」なら、社内の対応基準に沿って報告し、引き継ぎます。3つとも「いいえ」なら、通常のクレーム対応として続けます。

判定フローは、社内での一次判断を助けるためのものです。最終的な法的判断ではありません。そのうえで、迷ったら報告する側に倒す、とルールに書いておきます。報告してみたら通常のクレームだった、という1件で困る人はいません。報告しなかった1件が、スタッフを1人で抱え込ませます。
記録シートに残す項目
記録シートには、次の6項目を残します。記入例は架空のものです。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 発生日時 | 2026年10月○日 14時10分〜14時55分 |
| 対応チャネル | 電話(お客様相談窓口) |
| 相手の言動の内容 | 「今すぐ社長を出せ」と繰り返し要求 |
| 自社の対応内容 | 担当者が要望を確認し、対応できない理由を説明 |
| エスカレーション先 | 14時30分に窓口責任者へ交代 |
| その後の経過 | 翌日、責任者から書面で回答。以後の連絡なし |
記録は、事実関係を確かめ、再発を防ぐための材料になります。10項目でいえば⑤と⑦にあたる部分です。担当者の記憶に頼ると、1週間後には言った言わないの話になってしまいます。
チェック
記録シートを配る前に、次の3点を決めておきます。
- 記録の保管場所(紙かデータか、どこに置くか)
- 記録を見られる人の範囲(⑨のプライバシー保護にかかわります)
- 記録を振り返る頻度と、振り返る人
カスハラ対応でよくある失敗
対応マニュアルを作った会社でも、つまずく場所はだいたい同じです。代表的な4つの失敗と、それぞれの手当てを並べます。
- 方針だけで、現場の基準まで落ちていない:「毅然と対応する」とだけ書いても、スタッフは何をすればいいか分かりません。動作と回数で書いた判断基準を添えます
- 引き継ぎ先が1人(1役職)だけ:その人が休みの日に機能しません。2番手・3番手まで役職で書いておきます
- 記録が担当者の記憶頼み:再発防止に使えません。記録シートの6項目を、その日のうちに埋めます
- 研修が入社時の1回だけ:改定した内容が現場に届きません。改定のたびに短い練習を入れます
4つの失敗を見て、最初から全部そろえなければと身構える必要はありません。最初の版は30〜40点で出してください。方針1枚と、判断基準・引き継ぎ先の最低限があれば、現場は動き始めます。
マニュアルは生き物です。記録シートにたまった実例を見ながら、判断基準を1行ずつ足していけば、精度は後からついてきます。
向いている会社・向いていない会社
判断基準から書くこの作り方が合う会社と、次のテーマへ進んでよい会社を分けます。自社がどちらに近いかを確かめてから、着手する範囲を決めてください。
判断基準から作るのが向いている会社
- パート・アルバイトを含め、顧客に対応する人が頻繁に入れ替わる
- 店舗・窓口・コールセンターなど、顧客との接点が複数ある
- 過去に、現場の対応がばらついて揉めたことがある
判断基準から作らなくてよい会社
- 指針に沿った運用がすでに回っていて、現場の判断基準まで文字になり、浸透している
浸透まで済んでいる会社が次に確かめるのは、運用の定着度です。記録シートが実際に使われているか、決めた改定日に見直しが行われているかを点検します。
マニュアル整備の進め方比較
カスハラ対応マニュアルの整備には、大きく3つの進め方があります。分かれ目は、判断基準を誰が現場から聞き出すかです。
| 比較項目 | 内製のみ | 相談窓口・コールセンター向けツールの導入 | 伴走支援(株式会社2.1) |
|---|---|---|---|
| 判断基準の設計 | △ 書き手が自分の基準に気づきにくい | △ 入力する人しだい | ◎ 第三者が現場から聞き出す |
| 現場ヒアリングの負荷 | △ 通常業務と取り合いになる | △ 導入前の整理は自社で行う | ◯ 聞き取りの設計と記録を分担 |
| 法改正・実態変化への追従 | △ 担当者しだい | ◯ 記録から変化に気づける | ◯ 改定の段取りを運用に組み込む |
| 継続的な運用のしやすさ | △ 担当者の異動で止まりやすい | ◯ 通知や記録の仕組みが整う | ◎ 社内で更新できる形で渡す |
| 費用の形 | 人件費のみ | ツールの利用料 | 作成費+伴走 |
ツールが整えるのは通知と記録の仕組みで、判断基準そのものは誰かが書かない限り入りません。判断基準が文字になっていないままツールを入れると、記録は増えても、どこから引き継ぐかは現場の感覚のまま残ります。
方針づくりと現場の実態の把握は、自社で進めるのがいちばん早い部分です。一方、判断基準の言語化と教育への落とし込みは、現場への聞き取りと書き直しを繰り返す作業で、通常業務と取り合いになります。判断基準の言語化と教育への落とし込みに外部の伴走を入れると、途中で止まりにくくなります。
私達は完全丸投げのご依頼をお受けしていません。成果は二人三脚でしか生まれないからです。現場への聞き取りには、担当者の方にも同席していただきます。
カスハラ対応の事例ではありませんが、ベテランの判断を文字にした支援の例を2件挙げます。
- 従業員2万人規模の大企業:ベテラン数人の暗黙知を、186ページのマニュアルにまとめた
- ベテラン営業が多い会社:157ページのマニュアルを整備し、新人研修期間を40%短縮
私達は創業2014年から12年、650社の業務マニュアル作成と業務の見える化を支援してきました。私自身は内閣官房「業務の抜本見直し推進チーム」のアドバイザーとして、霞ヶ関の全府省・対象1,440課の標準化に関与しています。
カスハラ対応マニュアルのよくある質問
カスハラ対応マニュアルを作る担当者から出やすい質問を4つ取り上げます。分量の目安、対象かどうかの確認先、厚生労働省のマニュアルの使い方、パート・アルバイトへの展開です。
Q1. カスハラ対応マニュアルは何ページくらい必要ですか?
最初の版は、A4で4〜5枚から始めて構いません。一例として、方針1枚、判断基準1枚、引き継ぎ先の図1枚、記録シート1枚の構成です。8つの章を最初から全部厚く書く必要はありません。記録がたまるにつれて、判断基準のページが増えていきます。
Q2. 自社が義務の対象になるかは、どこで確認できますか?
確認先は、厚生労働省のリーフレットと特設ページです。リーフレットでは、措置を講じることが「事業主」に義務づけられると説明されています。自社がどの措置をどこまで講じるべきかといった個別の確認は、都道府県労働局や社会保険労務士にお問い合わせください。
Q3. 厚生労働省のマニュアルは、そのまま使えますか?
土台としては使えます。厚生労働省は「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(令和8年度改訂版)を公開しています。ただ、全国の企業向けに作られた資料なので、自社の窓口で誰が初動を受けるか、責任者がいないとき誰に引き継ぐかは書かれていません。初動の担当と引き継ぎ先を自社の言葉で書き足すと、現場で使えるマニュアルになります。
Q4. パート・アルバイトにも同じマニュアルを使えますか?
使えます。窓口や電話口で最初に対応するのが、パート・アルバイトの方という職場も多いはずです。判断基準を「新人にできるか」で書いておけば、雇用形態で内容を分ける必要はありません。判定フローと引き継ぎ先の図は、入社時に1回、改定のたびにもう1回、見せる時間を組み込んでください。
まとめ|今日からできること
施行日を迎えて方針を配った状態は、マニュアルサイクルでいえば可視化の入口です。カスハラ対応マニュアルで書くべき中心は、「どこからがカスハラか」「誰に、いつ引き継ぐか」という現場の判断基準。判断基準を文字にして手順と引き継ぎの流れに組み込み(仕組化)、訓練と更新で現場の当たり前にする(習慣化)。習慣化まで進んだとき、窓口での動きが施行前から変わります。
今日からできることは1つです。窓口・電話・店舗に立つスタッフ3人に、「最近いちばん困った対応」を1件ずつ聞いてください。集まった3件が、判断基準の最初の3行になります。
判断基準の聞き出し方や、整備の進め方を確かめたい方は、次のページをご覧ください。

