新規事業者必見!「経理業務マニュアル」の作り方とポイント

新規事業者必見!「経理業務マニュアル」の作り方とポイント

1. はじめに

業務の効率化と円滑な引き継ぎを実現するためには、業務マニュアルの存在が不可欠です。特に、経理業務はその精度とスピードが直接会社の信用に影響を及ぼすため、業務マニュアルの整備は絶対条件と言えるでしょう。しかし、経理業務のマニュアル作成には、固有の注意点や難しさが存在します。それらを知らずに作成したマニュアルは逆に混乱を招く原因となりかねません。

本章では、このような経理業務マニュアル作成の重要性とその具体的なポイントを解説します。新たに事業を始める方から、すでに経営を行っていて経理業務の見直しを考えている方まで、幅広い読者にとって参考となる内容を提供します。マニュアル作成の第一歩として、ぜひ本章をご一読いただければ幸いです。

2. 経理業務マニュアルの必要性

「経理業務マニュアル」を作成する理由は、以下の三つが主な要素となります。

(1)業務のブラックボックス化の解消:経理業務は専門性が高く、詳細が一部の担当者しか理解していないことが珍しくありません。しかし、これでは業務がブラックボックス化し、代替人員がいない状況や担当者の退職などが生じた際に混乱を招きます。マニュアルを作ることで、誰もが業務の全体像を把握し、自律的に動ける組織を作り上げます。

(2)業務効率化と知識・情報の共有化:業務マニュアルにより、同じミスの繰り返しを防ぐだけでなく、業務手順やチェックポイントを明示することで、効率的に作業を進めることが可能となります。また、知識・情報を共有化することで、チーム全体の業務理解が深まり、全体の生産性向上に繋がります。

(3)新規入社者や後続者への円滑な業務引継ぎ:経理マニュアルがあれば、新規入社者や後続者がすぐに業務を理解し、実行することが可能です。これにより、人事異動や新規採用時の業務停滞を無くすことができます。

これらの要素から、経理業務マニュアルの作成は、組織の持続的成長と業務効率化に大いに貢献します。

(1)業務のブラックボックス化の解消

経理業務は、他部門から見ると専門性が高く、その具体的な作業内容が見えにくい、いわゆる「ブラックボックス化」が進んでしまう傾向があります。これは、情報の非対称性を生み、業務の透明性を損ないます。

経理業務マニュアルの作成は、この「ブラックボックス化」を解消する有効な手段です。マニュアルには、経理業務の全体像や各業務の詳細な手順、それぞれの業務が会社全体の経営にどのように影響するかなど、経理業務の全貌を明らかにするための情報が詳細に記述されます。これにより、他部門のスタッフも経理業務を理解しやすくなり、全社的な視点で業務を進めることが可能になります。

以下に表でブラックボックス化解消前後の比較を示します。

|~ブラックボックス化解消前後の比較~| | :——: | :——: | | 解消前 | 解消後 | | 業務内容不明 | 業務内容明確 | | 情報非対称 | 情報共有化 | | 業務透明性低い | 業務透明性向上 |

(2)業務効率化と知識・情報の共有化

経理業務マニュアルは、業務効率化に重要な役割を果たします。業務フローが明確に示されていることで、一つひとつの作業がどのような目的を持ち、次の業務にどうつながっていくのかを理解することができます。これにより、作業の無駄を省き、よりスムーズに業務を進めることが可能になります。

また、マニュアルは知識・情報の共有化にも寄与します。業務内容や手順が文書化されていれば、それを参照することで新入社員や他部署からのサポートスタッフも同じレベルの知識を共有することが可能となります。これにより、情報格差を解消し、全員が安心して業務に取り組むことができます。

次の表は、マニュアルの有無による業務効率化と情報共有化の具体的な効果を示しています。

マニュアルの有無効率化の具体的な効果情報共有化の具体的な効果
あり・作業の無駄削減
・業務のスピードアップ
・新入社員の早期戦力化
・情報格差の解消
なし・作業の無駄が生じる
・業務の遅延
・新入社員の教育に時間がかかる
・情報格差が生じる

以上から、経理マニュアルは業務効率化と情報共有化の双方を推進し、全体として経理業務の質とスピードを向上させる役割を果たすことが明確となります。

(3)新規入社者や後続者への円滑な業務引継ぎ

経理マニュアルの重要な目的の一つに、新規入社者や後続者への業務引継ぎを円滑に行うことがあります。特に、経理業務は専門性が高く、業務内容を新たに学習する新入社員や他部署から異動した社員にとっては、その理解と実務への適応は時間がかかる傾向があります。

ここで経理マニュアルが役立つのです。マニュアルが詳細な業務フローや手順を整理して描写している場合、新入社員や異動者はそれを頼りに自己学習を進め、自ら業務を遂行する能力を早期に身につけることが可能です。

さらに、経理マニュアルを活用すれば、業務引継ぎ時の口頭での説明が曖昧になる問題を軽減し、一貫した業務の理解を保つことができます。これによって、ミスの発生を防ぎ、業務品質の維持に寄与します。

表1.業務引継ぎ時の経理マニュアルの活用例

新入社員や後続者の課題経理マニュアルの活用
業務理解のための時間マニュアルの自己学習により早期に業務遂行可能
口頭説明の曖昧さ一貫した業務理解を保つ

以上から、新規入社者や後続者への円滑な業務引継ぎは、経理マニュアル作成の重要なポイントであると言えます。

3. 経理マニュアル作成の失敗例とその対策

まず、経理マニュアル作成の失敗例として挙げられるのが、マニュアルが定期的に更新されず、現場の業務状況に合わなくなってしまうケースです。業務の変化に対応させるためには、マニュアルの定期的な見直しと更新が必要不可欠です。

次に、マニュアルが一貫性を欠き、同じ業務に対して異なる記述が存在するケースもあります。これは、マニュアルが複数の人によりバラバラに作成された場合によく見られます。全体の一貫性を保つためには、テンプレートを作るなど統一感を保つ工夫が求められます。

また、専門用語や略語が多用され、マニュアルが理解しにくくなってしまう問題もあります。マニュアルは全ての担当者が理解できる必要がありますので、専門用語や略語の使用は控え、必要な場合は十分な説明を加えるようにしましょう。

これらの失敗例を踏まえて、経理マニュアル作成時には定期的な更新、一貫性の確保、そして全ての担当者が理解できる内容にすることを心掛けてください。

(1)マニュアルの更新や活用がされていない問題

「経理マニュアル」が存在しても、その更新や活用が適切に行われていなければ、最大の効果を発揮できません。事業環境や社内のルール変更、税制改革など、経理業務を取り巻く状況は日々変化しています。このため、古い情報のままマニュアルが放置されていると、ミスの原因となるだけでなく、業務効率も阻害します。

また、マニュアルが作成されただけで終わり、現場のスタッフに浸透していない場合も問題です。理想的な経理マニュアルは、すべての経理スタッフが日々参照し、必要に応じて更新できる生きた文書であるべきです。

これらの課題を解決するための一例として、マニュアルの更新スケジュールを立て、それを厳守することが挙げられます。定期的な見直しと更新を行うことで、マニュアルは常に最新の情報を提供し続けます。また、新たな業務フローやマニュアルの変更点を定期的に共有し、スタッフ全員が最新のマニュアルを活用できる環境を作ることも重要です。

(2)マニュアルの一貫性がない問題

経理マニュアル作成時に陥りがちな課題の一つが、「マニュアルの一貫性がない」問題です。これはマニュアルが部門ごとや業務ごとにバラバラに作成され、それぞれの構成や表現方法が異なり、全体として統一感を欠く状態を指します。

具体的には、例えば仕訳の記載方法が業務ごとに異なる、記載のフォーマットが揃っていない、同じ業務内容でも表現が一致していない等、マニュアル全体としての統一感がない状態です。これにより、新たにマニュアルを読む人が混乱を招く可能性があります。

この問題を解消するためには、マニュアル作成時に一貫したテンプレートを用いることが有効です。テンプレートを用いることで、記載内容や表現方法を統一し、全体的な一貫性を保つことが可能となります。その結果、マニュアルの理解度が上がり、業務効率も向上するでしょう。

(3)マニュアルが理解しにくい、閲覧しにくい問題

経理マニュアル作成時によく見られる失敗の一つが、「マニュアルが理解しにくい、閲覧しにくい問題」です。経理業務は専門知識を必要とするため、マニュアルを初めて手にする人にとっては難解な内容になりがちです。

具体的な問題点としては、専門用語が多すぎる、表記が一貫していない、文章が長くて読みづらいなどがあります。例えば、「売掛金」や「未払金」などの専門用語を初めて見る人にとっては理解しづらいでしょう。

また、閲覧しにくい問題としては、マニュアルが冊子形式だと、持ち運びに不便であったり、探したい情報にたどり着きづらいという問題もあります。

これらの問題を解消するためには、「専門用語は回避し、できるだけ一般的な言葉で書く」、「見出しやインデックスを工夫し、情報がすぐに見つけられるようにする」、「電子化やクラウド化を進め、いつでもどこでも閲覧可能にする」などの対策が有効です。これらを意識したマニュアル作成を心がけ、全ての担当者がスムーズに業務を遂行できる環境を作りましょう。

4. 事例に学ぶ経理マニュアルの作り方

実際の業務現場から学べる経理マニュアルの作り方を解説します。

まず(1)業務内容を詳細に把握し、業務フローを作成します。具体的な業務の流れを示すことで、ミスの原因を避け、新規入社者もスムーズに業務に入れます。業務フローは表形式で記載すると視覚的にわかりやすくなります。

次に(2)テンプレートを作成し、一貫性を保つ点です。同じ業務でも作成者や時期によって記載内容がバラバラだと混乱を招きます。一貫性を保つために、マニュアルの雛形を事前に作成することが重要です。

その後、(3)文書だけでなく図表や動画を活用します。文字だけのマニュアルは読む側にとって負担が大きいです。図表や動画を使うことで、視覚的に理解しやすく、また業務の流れを具体的にイメージしやすくなります。

最後に(4)専門用語や略語は避けることです。初めて業務に関わる人にとって、専門用語や略語は理解の壁となります。すべての担当者が理解できるような、平易な言葉を用いることが大切です。

以上のポイントを押さえて、経理マニュアルを作成しましょう。

(1)業務内容を詳細に把握し、業務フローを作成する

「経理マニュアルを作成する際、まずは対象となる業務内容の詳細な把握が必要です。全体の業務フローやプロセスを明確に理解することで、どのような手続きが必要であるか、どの業務が他の業務に影響を与えるかが可視化されます。これにより、無駄な作業を省くことが可能となり、また、後継者への業務引継ぎもスムーズに行えます。

具体的には次のようなステップで進めていきましょう。

  1. 業務内容の洗い出し: 帳簿の記帳、請求書の発行、決算報告等、経理業務全般を網羅します。
  2. 各業務の手順の明確化: 各業務がどのような手順で行われるかを詳細に把握します。
  3. 業務フローの作成: 上記で洗い出した業務内容と手順を元に、各業務がどのような流れで進行するかを示すフローチャートを作成します。

業務フローは以下のような形になります。

業務名業務手順
帳簿の記帳1. 取引データの確認→2. データ入力→3. 確認・修正
請求書の発行1. 売上データの確認→2. 請求書作成→3. 確認・送付
決算報告1. 各種データ集計→2. 報告書作成→3. 確認・提出

これらを踏まえ、業務マニュアル作成における第一歩として、まず業務内容を詳細に把握し、業務フローを作成することが大切であると理解していただければ幸いです。

(2)テンプレートを作成し、一貫性を保つ

経理業務マニュアル作成の際に重要なのが、一貫性の保持です。これを実現するための一つの方法として、「テンプレート」の作成があります。

テンプレートとは、特定の形式や構造を定めた、再利用可能な雛形のことを指します。経理業務マニュアルにおいては、例えば「業務名」「業務内容」「業務手順」「注意点」などの項目を含んだテンプレートを作成し、全ての業務に対してこのテンプレートに沿って記述することで、マニュアル全体の一貫性を保つことが可能です。

業務名業務内容業務手順注意点
例:仕訳入力会計事務の基本的な業務で、取引の内容を会計ソフトに入力すること。①取引書類を確認する ②会計ソフトに仕訳情報を入力する ③エラーチェックを行う仕訳の誤入力は決算報告に影響するため、特に注意が必要です。

このように、テンプレートを活用することで、業務ごとの特性を明確にしつつ、全体の見通しや理解度を高め、経理業務マニュアルの品質を向上させることができます。

(3)文書だけでなく図表や動画を活用する

経理マニュアル作成においては、文書のみで説明を行うことが一般的ですが、より分かりやすいマニュアルを作成するためには、図表や動画を活用することが有効です。

図表を用いるメリットは、一目で業務の流れやポイントを把握できることにあります。例えば、「売上計上のフロー」を示す場合、文章だけでは伝わりづらい手続きも図表にすることで視覚的に捉えられ、理解が深まります。

また、動画を活用することで、具体的な操作方法や手順をリアルタイムで確認することが可能です。会計ソフトの操作方法や複雑な決算処理の手順などは、テキストだけでは伝わりづらい部分も多いです。そのような場合には、PC画面の操作を録画した動画をマニュアルに添付しましょう。

ただし、図表や動画の作成・管理には時間と労力が必要となります。そのため、優先的にマニュアル化するべき業務や頻繁に疑問が出る業務から取り組んでいくと効率的です。

(4)専門用語や略語は避け、全ての担当者が理解できる内容にする

本章では、「経理業務マニュアル」の作り方において重要な「専門用語や略語は避け、全ての担当者が理解できる内容にする」について詳しく解説します。

経理業務は専門的な知識が求められる一方で、その業務を全社員が理解し、適切に遂行できるようにすることが重要となります。そのため、マニュアルの作成にあたっては、専門用語や略語をなるべく避け、全ての担当者が理解できる平易な表現を用いることが求められます。

具体的には、例えば「資本金」という専門用語は「会社を設立するために必要な金額」と説明し、略語である「BS(バランスシート)」は「財産と負債の状況を示す表」と表記するなど、初めて目にする人でも理解しやすいように工夫します。

また、補足説明として表や図を活用することも大切です。情報を視覚的に理解しやすくするため、例えば「会計年度」の流れを示すタイムライン図などを挿入します。

このように、全ての担当者が理解できるようなマニュアル作成を心掛けましょう。これにより業務理解の深化だけでなく、円滑な業務遂行が可能となります。

5. ITツールを活用した経理マニュアルの作成と運用方法

近年、ITツールの進化により、経理マニュアルの作成と運用が格段に楽になりました。それでは具体的な方法を見ていきましょう。

(1)クラウドストレージの活用: クラウドストレージを使うことで、マニュアルのアクセス性が向上し、業務効率化につながります。何より、別の場所にバックアップが取れるため、データの紛失リスクを減らせます。

(2)共有ツールを用いた情報共有: SlackやTeamsなどの共有ツールを用いて、各種情報を共有することが可能です。これにより、マニュアルの更新情報などを即座に共有でき、全員が最新の情報を把握できます。

(3)ITツールによる業務効率化: 経理業務に特化したITツールを活用すると、業務が自動化され、時間短縮につながります。例えば、会計ソフトを使用すると、入力ミスを減らすことができます。

ITツールの活用は、経理マニュアルの作成だけでなく、業務全体の効率化に寄与します。適切なツールを選んで活用してみてください。

(1)クラウドストレージの活用

経理マニュアルの作成では、情報の保存と共有にクラウドストレージを活用することがおすすめです。クラウドストレージを使用することで、どこからでもマニュアルにアクセス可能になり、必要な情報をいつでも取り出せるようになります。また、更新した情報はリアルタイムで共有されるため、常に最新の情報を手元に持つことができます。

例えば、GoogleドライブやDropboxなどのクラウドサービスを利用すれば、マニュアルのテキストデータだけでなく、図表や動画などの多メディアデータも一元管理可能です。これらのサービスは、共有設定や編集権限の設定も細かくできるため、業務に合わせた運用が可能です。

サービス名特徴
Googleドライブ文書、表計算、プレゼンテーションなどGoogleの各種サービスと直結。容易に共有・編集可能。
Dropbox大容量のファイルもスムーズに共有。バージョン履歴機能で編集履歴も確認できる。

クラウドストレージの活用により、業務効率化に繋がるだけでなく、情報の流通を速め、全社員が常に最新のマニュアルを参照できる環境を整えることが可能です。

(2)共有ツールを用いた情報共有

経理マニュアルの情報を共有するためには、共有ツールの活用が必須です。簡単にアクセスでき、必要な情報を迅速に見つけ出せるような環境作りが重要となります。

共有ツールには、GoogleドライブやMicrosoftのOneDrive、Dropboxなどがあります。これらのツールを使用すれば、クラウド上でデータを共有することが可能です。また、リアルタイムにデータを更新したり、同時に複数の人が作業を行うことも可能になります。

また、情報の検索性を高めるためには、ファイル名やディレクトリ構成を統一することが有効です。例えば、”○○業務_マニュアル_年月日”といった形式でファイル名をつけたり、業務ごとにフォルダを作成して整理するといった工夫が必要です。

さらに、マニュアルの更新があった際には、チャットツールやメーリングリストを使用して通知を行うことで、全員が最新の情報を把握できるようにすることも大切です。

以上のような共有ツールの活用により、経理マニュアルの情報共有を円滑に行い、業務効率化を図ることができます。

(3)ITツールによる業務効率化

経理マニュアルの作成と運用において、ITツールの活用は欠かせません。特に業務効率化の観点からは、その重要性は一層増します。

まず、業務フロー作成ツールを用いることで、図形や色分けを用いて業務手順を視覚的に表現できます。これにより、マニュアルの見易さと理解度が上がります。代表的なツールとしては、Microsoft OfficeのVisioや無料のCacooなどがあります。

また、経理業務には数値計算やデータ整理が多く関わるため、ExcelやGoogleスプレッドシートのような表計算ソフトを活用します。特に、関数やマクロ機能を使うことで、複雑な計算も自動化し、手間を大幅に減らすことが可能です。

さらに、クラウド会計ソフトを使えば、伝票の入力から決算書の作成までを一元管理し、業務のスピードアップとミスの減少が期待できます。例えば、freeeやMoneyForward Cloudなどが該当します。

これらのITツールを適切に活用することで、業務の効率化とマニュアル作成の質向上を実現できます。ただし、新たなツールを導入する際は、操作方法もマニュアルに記載し、全員が使える状態を保つことが肝心です。

6. 経理マニュアル作成時の注意点とポイント

経理マニュアル作成時に注意すべきポイントは三つあります。

まず一つ目は、「業務の全体像を理解し、マニュアルに反映させる」ことです。経理業務は細かい作業が多く、それぞれの業務がどのように全体の流れに関連しているのかを理解することは重要です。これにより、マニュアルは各業務が独立しているのではなく、全体の一部となる一連の流れを示すようになります。

二つ目は、「頻繁にミスが発生する業務に対しては、注意喚起を含める」ことです。例えば、「請求書の発行」という業務はミスが発生しやすい部分であるため、その部分では特に詳細な説明を入れ、注意喚起を行うべきです。

最後に、「定期的な更新と改訂を行う」ことも重要です。業務内容や社内ルール等が変更された際には、それを反映させるため、マニュアルの改訂が求められます。

以上の三つを意識することにより、質の高い経理マニュアルが作成できるでしょう。

(1)業務の全体像を理解し、マニュアルに反映させる

経理マニュアル作成時の重要なポイントとして、「業務の全体像を理解し、マニュアルに反映させる」ことが挙げられます。経理業務は細部に及ぶ多くのプロセスが存在し、それぞれが組織の財務健全性を保つために重要な役割を果たしています。そのため、マニュアル作成に当たっては、1つ1つの業務だけでなく、それらが全体としてどのように連携し、組織全体の目標に対してどう寄与しているのかを理解することがまず必要です。

例えば、下記のような表を作成し、全体像の把握とマニュアルへの反映を行うと良いでしょう。

業務名詳細全体の業務フロー内での位置重要性
仕訳入力会計情報のデータ化初期段階正確な情報入力が後続作業に影響

このように、業務の全体像を把握し、それをマニュアルに反映させることで、業務の流れや重要性を理解しやすくなり、効果的な業務遂行が可能となります。

(2)頻繁にミスが発生する業務に対しては、注意喚起を含める

「経理業務は細心の注意が必要な作業が多く、特に初期の頃や繁忙期にはミスが発生しやすいとされています。そうした業務に対しては、マニュアル内で特に注意喚起を行うことが重要です。

たとえば、以下のような表を作成し、具体的なアクションと注意点を明示することで、ミスの予防につながります。

業務内容ミスの具体例注意点
経費精算レシートの金額と精算表の金額が合っていないレシートは細心の注意を払い確認する
売掛金管理入金確認の遅れによる売掛金のズレ毎日の入金確認を徹底する

また、マニュアルは固定のものではなく、現場のフィードバックを取り入れて常に更新していくことが大切です。ミス発生の原因を分析し、その都度改善策をマニュアルに反映させましょう。これにより、経理業務の質の向上と、ミスの頻度を減らすことが期待できます。

(3)定期的な更新と改訂を行う

業務マニュアルの重要性は、その最新性と精度に大きく依存します。経理業務は年度ごとの税制改正や内部のルール変更により、詳細が変更されることが少なくありません。したがって、マニュアルの内容が古くなると、新規メンバーは誤った方法で業務を行うリスクが生じます。

具体的な更新と改訂の方法は、まず、予め定期的なマニュアルの見直しスケジュールを設けることが有効です。例えば、次のようなタイミングで見直しを行うとよいでしょう。

【表1】マニュアルの見直しタイミング

  • 年度始め:税制改正に伴う内容変更の反映
  • 人事異動時:新規メンバーのフィードバックを基に内容を見直し
  • 内部ルール変更時:変更内容を反映

また、マニュアル作成者だけでなく、実際に業務を行うメンバーも改訂作業に加わることで、現場の声を反映した実践的なマニュアルを作成することが可能です。マニュアルの更新と改訂は、求められる経理業務の質を高めるために必要不可欠なステップです。

7. まとめ

経理業務マニュアルの作成は、新規事業者にとって必要不可欠なステップです。その作成に当たっては、業務内容の詳細な把握から始め、一貫性の保たれたテンプレートの作成、図表や動画を活用した可視化、そして全ての担当者が理解できるような内容作りが重要となります。

また、クラウドストレージや共有ツールといったITツールの活用も見逃せません。それにより、業務効率化だけでなく、マニュアルの更新や情報共有も円滑に行えるでしょう。

しかし、マニュアル作成には注意も必要です。業務の全体像を理解し、それをマニュアルに反映させること、頻繁にミスが発生する業務に対しては注意喚起を含めること、そして定期的な更新と改訂を繰り返すことが求められます。

以上が、経理業務マニュアル作成の要点です。これらを参考に、効果的なマニュアル作りに挑戦してみてください。